1929年にイギリスにて刊行されたラッセルによる『結婚論』
2019年現在から90年も前に出版された本に関わらず内容は新しい。
当時にあっては相当に斬新な提言だったのだろう。
「そもそも結婚とは何なのか?」
実は、人間は原始状態では単婚ではなく乱婚であったことが最新の研究では有力になりつつある。
このラッセルの1929年に刊行された40年後の1970年代から、ボノボが発見され研究されるようになったのだ。
ラッセルはこの著書で言っている。人間は研究者の話では、一夫多妻もしくは一夫一妻であって、多夫多妻状態というのはありえず、本来的に生涯の伴侶と決めた相手と一生を添い遂げる生物なのだと。
だが、それが人間の本性であるにしては、なぜ姦通罪などをつくり、そうさせないようにしなければならないのだろうか。
単婚が自然状態であるならば人間は放っておいても一夫一妻制へと向かうはずが、事実はその逆である場合が非常に多い。
ボノボの発見によって人間の原子状態は乱婚であったという説が非常に説得力をもつようになってきたが、そのことをラッセルは直感していたようにも受け取れる。
そもそもの結婚の起源はこうだ。
農耕革命により、家父長制が生じ、男が土地、食糧、家畜を所有するようになる。
それに伴い女性も財産として所有化されることが起こる。
その中で一夫多妻も生じる。
その後、キリスト教が起こりパウロの教えの影響で一夫一妻が原則となる。
その神の教えに逆らうも者は罰を与えられる。
だが、姦通罪は女性の方にのみ明らかに重い罰を与えた。
それは男性にとって女性は所有物であったことが、起因していると考えられる。
なぜ生殺与奪権が男性にのみ与えられていたのか?など、
結婚ということを掘り下げていくと、人間の文化の起源や、男女の社会的身分の成り立ちにもつながっていく。
ラッセルはこう結論する。
人間の愛の在り方は2つだ。
できる限り人間を抑制し姦通をさせないことにエネルギーを割くか、
それとも人間の性向を尊重してある程度のことには目をつぶり、寛容をもってして、嫉妬を抑えることのエネルギーを注ぐか。
どっちにしても大変であることは同じ。それならば、抑圧ではなく寛容である方の自己抑制に力を割くべきではないか。
それが真の愛というものではないか。
80歳にして4度目の結婚で幸せを享受したラッセルの言うこの在り方は、離婚率が過去最高に高まっている現代にも通ずる考えなのではないだろうか。
YOERU.