「私はいままでの生涯を初めからそのまま繰返すことに少しも異存はない。」
ベンジャミン・フランクリン(1706-90)
アメリカ建国の父であり、印刷業者や哲学者、発明家や政治家などの多面な顔をもつ人物である。
そのフランクリンによって書かれた「フランクリン自伝」は、フランクリン死後の翌年1791年にフランスで出版され、現在に至るまで読まれ続けている古典的なロングセラーだ。
フランクリンと福沢諭吉の共通点
実は、この岩波文庫の訳者あとがきで、福沢諭吉の「福翁自伝」が勧められているように、時代も国も違う二人だが、共通点は多い。
フランクリンは百ドル札の顔であり、福沢諭吉は一万円札の顔で使われた。
二人とも激動の時代の最中に生まれている。フランクリンはアメリカがイギリスから独立する時代に。福沢諭吉は幕末から明治維新への変革期に。
その激動の中で自身の精神の拠り所を、政府や神などの外部に依拠するのではなく、自身の修養をもってして努める態度。
フランクリンは「十三徳」という規律で自分を律し、福沢は「独立不羈」の精神で生きた。
読書好きなフランクリン
そのように色々と共通点のある二人だが、一番おもしろいのは、共に異様に読書が好きということだ。
「幼い時から本を読むのが好きで、わずかながら手に入る金はみんな本代に使った。」
フランクリンも福沢もどれだけ読書が好きなのか。
本を得るためには、食費を削ってでも節約して買うというのは、古今東西変わらない読書好き人間の習性なのかもしれない。
福沢が塾を開いて、それがのちに慶應義塾大学になったように、
フランクリンは読書好きの人間を集めて、相互の向上を図る目的でブッククラブを始めた。
これが最終的に図書館になり、読書が国中で普及して、たいていの他国の同じ階級の人々よりも、知識も教養も富む状態になり、外国人の注意をひくまでになったようだ。
好きが高じて人の役に立つという最たる例だ。
この二人の生き様を見ていると、
読書というのは自分の人生だけではなく、人の人生にも多くの影響、役立ち人生を豊かにする心得や考えを与えるのだと、改めて思う。
結局は、二人は何をしたのかと言うと、国中の人々に読書習慣を身につけさせたのだ。
勉強する面白さとその価値を伝えたのだ。
それは元々は自分の周りのほんの数人で始まり、さらに元をただせば自分という一人の人間に、読書のおもしろさを教え、気づかせたのだと思う。
フランクリンは言っている。
「私はいままでの生涯を初めからそのまま繰返すことに少しも異存はない。」
何が、このように断言できる人生をつくるのか。
それが何にせよ、
その要因を養ったのは間違いなく読書だろう。
YOERU.